地下足袋山中考 NO2
<お遍路と山旅>

 或る旅行エージェントの方から四国八十八カ所お遍路巡礼の旅(約1,200年前に弘法大師が開いた霊場巡拝)は、日本最大の宗教観光に価すると聞いた。総行程約1,2001,400q、昔は世捨て人の旅として知られた八十八カ所巡りだが、最近はただの信仰心ではなく、健康のためやストレスの解消、これからの人生を考えたい等々・・・。人生に潤いと活力を求めて巡礼に臨む人が多いという▲巡礼ツアー募集サイトには、「光に満ちた四国の大自然の中、お大志様(弘法大師)と共に心と身と体をみがき、88の煩悩を一つ一つ取り除き、大自然の中で生かされている喜びにひたると共に、自分自身を見つめ直す修行の旅です。四国路の人々の厚い人情は巡礼者の心を癒し、素直な気持ちにさせてくれます。俗塵を離れ、人々の厚い心遣いに感謝し、生きる喜びを見出すため、自分探しの旅に出てみませんか。」とある▲巡礼手段は徒歩、公共交通機関の利用、バスによる団体、マイカーやオートバイ、自転車に加え空からの遊覧巡礼もあると聞けば、現代版ツアー商品の売込み以上に、完成された募集企画になっていることに驚く▲八十八カ所を通しで巡礼した場合、徒歩の場合40日、観光バスや車を利用する場合は10日程度を要する。人数は定かではないが、年間30万人(うち歩き遍路が5千人)といわれている。述べ数百万人に及ぶお遍路の滞留が生出す経済効果の大きさが想像できる▲山岳観光において中高年層が圧倒的に多いのは、八十八カ所結願成就が100名山の山岳信仰に移ったようで面白い。それは日本三大霊山(富士山、立山、白山)祈願や単なるピークハンターの域を超え、心象風景を追い求める山旅にシフトしているからだ。昨今のトレッキングブームは、21世紀版「全国100名山お遍路巡礼の山旅」と見まがうほどの様相を呈している▲スポーツイベントも老若男女を問わず、転戦行脚の様相だ。100キロチャレンジマラソン、フルマラソンやウォーキング、ロングのトライアスロンやアドベンチャーレース、24時間山岳マラソン等々、長距離志向の根っこは自身の体力の維持と確認も含めた自分探しの旅なのかもしれない▲森吉山の案内も花鳥風月にとどまらない。老後の生き方論に政治情勢、介護保険や年金事情まで会話がはずみ「TVタックル」より奥が深い。一日中笑い転げる高揚感は女性に備わった力なのか・・・。ガイドも自然解説だけでは通用しない▲自身の体力に願をかけ、介護の気配を背負い、一服の涼を求め、名山(霊山)を巡る花旅は、癒しを求め、煩悩を追い払う遍路旅と見事に重なり納得がいく。2010.4.10